アカデミイ書店から発信する新コンテンツ「LightBooks~あなたの人生を照らしてくれた1冊〝譲ってください〟~」。第一弾は広島ドラゴンフライズの絶対的な司令塔であり、チームの勝敗を左右する最重要選手と言える、寺嶋良選手です。卓越したスピードとゲームメイクでコートを支配する彼の動向を、今、多くのファンが固唾をのんで見守っています。長期離脱という過酷なリハビリを乗り越え、誰もが待ち望んだ復帰を果たした直後、彼を襲ったのは非情にも「再びの怪我」でした。 誰もが絶望するような逆境の渦中にあっても、彼の瞳は驚くほど冷静に、精度高く未来を見つめています。その折れない強靭なメンタリティの秘密は、彼が年間100冊以上を貪るように読むという「本」の中にありました。 今回は、寺嶋選手の人生を文字通り“照らし”、心の支えとなってきた珠玉の3冊を徹底深掘りします。怪我と向き合う現在のリアルな胸の内から、一人の人間としての人生観、そしてファン必見の「将来の展望」まで、寺嶋良選手の“現在地”に深く迫ります 。※購入方法については、ページ末をご確認ください※1冊目『運転者』(喜多川泰・著)―今回、寺嶋さんの人生観を語る上での「メインの1冊」として、まず『運転者』を挙げていただきました。寺嶋さんにとって本当に特別な作品だそうですね。寺嶋: はい、これは僕の人生のバイブルと言ってもいいくらい、大好きな名作です。物語は、人生が全然うまくいかなくて「自分はなんて運が悪いんだ」と絶望している主人公の営業マンが、不思議なタクシーの運転手に出会うところから始まります。その運転手が変わった人で、主人公に色々とお節介なアドバイスをくれるんです。最初は鬱陶しがっていた主人公も、その言葉に従っていくうちに、人生がだんだんと良い方向に転がり始めていく。最後に「あんたは運転手よりも、俺の人生を転じた『運転者』」というセリフが出てくるんですが、ただ車を運転する「運転手(しゅ)」ではなく、運を転ずる「運転者(しゃ)」という意味だったんだとタイトルが回収された時、本当に鳥肌が立ちました。―この本と出会った当時の寺嶋さんの状況や、ご自身の経験と重なる部分が大きかったのでしょうか。寺嶋: まさにそうです。広島に移籍してきたばかりの時期で、環境がガラリと変わったこともあり、自分の中で色々と葛藤や悩みを抱えていたタイミングでした。作中に「報われない努力はない」というテーマが出てくるんです。ただの綺麗事ではなく、その「報われる仕組みや背景」がロジカルに、かつ温かく書かれているんです。プロの世界にいると、結果が出ない時に「自分の努力は無駄なんじゃないか」と疑いたくなる瞬間がどうしてもあります。そんな時期に、この本は「今やっていることは絶対に無駄じゃない」と、僕の努力や取り組みを肯定し、支えてくれました。僕の「物側に前向きに捉える、諦めない」という人生観は、この本にかなり影響を受けていると思います。2冊目『ライオンのおやつ』(小川糸・著)―2冊目は『ライオンのおやつ』です。こちらは寺嶋さんの「死生観」や、ご家族との大切な思い出に深く結びついているそうですね。寺嶋: はい。この本は、僕の父が亡くなった後、父の部屋を片付けている時に1冊だけポツンと置いてあった小説なんです。父は普段、小説なんて全く読まない人で、ビジネス書や新書ばかり読んでいるような現実主義のタイプでした。そんな父が、心臓の病気で亡くなる前に、なぜこの本を読んでいたのか。もしかしたら自分の死期を察して、この本を手に取ったのかなと思ったんです。作中に「人生というのはつくづく1本の蝋燭に似ている……自ら火を消すことも消すこともできない。一度火が灯ったら、燃え尽きて消えるのを待つしかない」という一節があり、そこに線を引きました。父を亡くして「死」について深く考えていた時期だったので、この言葉が父の姿と重なり、僕自身が父の死を受け入れる大きなきっかけをくれました。「短い蝋燭もあれば、長い蝋燭もある。それが寿命なんだ」と、冷静に、かつ温かく死を受け止めさせてくれた大切な一冊です。3冊目『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子・著)―3冊目は『月曜日の抹茶カフェ』です。こちらは前の2冊とはまた違った雰囲気の作品ですね。寺嶋: そうですね。これはふと手にとって読んだのですが、すごく心が温まる優しいお話です。12人の登場人物が出てくる連作短編集で、それぞれの物語や人間関係が、どこかでフワッと繋がっている。日々、僕たちが何気なく過ごしている日常も、実は誰かの人生と繋がっていて、お互いに影響を与え合っているんだなと気づかせてくれます。作中に出てくる、ハッとさせられるような登場人物たちのセリフにたくさんマークを引きました。大作を構えて読むというよりは、日常の愛おしさや、人との繋がりの大切さを思い出させてくれる作品です。〝文芸の登場人物に自分を重ね合わせる〟寺嶋流読書論とはQ:人生やビジネスで悩んだ時、自己啓発本を読む人が多い中で、今回寺嶋さんが選ばれた本はすべて小説(文芸書)です。ここにはこだわりがあるのでしょうか。寺嶋: はい。一般的な自己啓発本やビジネス書って、どうしても著者の顔が見えすぎてしまうというか、「こうしなさい」「こうすべきだ」という押し付けを感じてしまうことが多くて。極端な話、「本当にこの著者はこれができているのかな?」って邪推してしまう瞬間もあるんです。でも、小説の登場人物の言葉には、僕たち読者との間に不思議と「壁」がないんですよね。物語の中で、さらっと聞き流してもいいはずのセリフなのに、なぜか心に引っかかる。それはきっと、創作(フィクション)の世界でありながら、登場人物たちがそれぞれの人生や命をかけて、その言葉を紡いでいるからだと思うんです。著者自身の意図や人生観が前に出すぎず、適度にグレーだからこそ、読者である僕たちが自分の経験を重ね合わせる余白が生まれる。押し付けがないからこそ、素直に心に深く刺さるんです。だからこそ僕は、自己啓発的な答えを、あえて文芸書の登場人物たちの生き様やセリフから抽出して受け取るようにしています。寺嶋良の「今」と「これから」Q:本から多くの影響を受け、度重なる怪我を乗り越えてこられた寺嶋さんですが、ファンが最も心配している「今のリアルな心境」を教えていただけますか。※2026年4月に右膝蓋軟骨損傷と診断され、手術を行った― 周りからはすごく心配されますし、もちろん現役選手としての不安や悔しさはあります。でもこの時期も、「次のステップのための、良い寝返り期間だな」くらいに思っています。「もう一つのセカンドキャリアを考えるための、新たな点ができた」と前向きに考えていますね。また、選手としての活動ではないですが、7月から新しく「読書習慣を身につけるためのオンラインサロン」をスタートさせます。月額定額制で、僕が課題図書(例えば『運転者』など)を指定し、月初めに「こうやって読んだら面白いよ」という解説動画を共有します。そして月末に僕の感想文を投稿して、メンバー同士でも掲示板で読書体験を共有し合えるような、本を通じた温かいコミュニティ(場所)を作りたいなと思っています。将来的には、地元の本屋さんと連携し、「本屋さんに足を運んで本を買う」というサイクルを生み出すような、本に関わるビジネスモデルにも挑戦していきたいという思いもあります。コートの上でも、コートの外でも、僕の挑戦はまだまだここからです。<話を聞いた人>寺嶋良(てらしま・りょう)B.LEAGUE・広島ドラゴンフライズ所属。1997 生まれ。年間に100 冊を読むなど、バスケットボール界随一の読書家として知られている。SNS 等で本の情報を発信するだけでなく、自身がセレクトした本を送るサブスクリプションのサービスや、読書好きが集まるオンラインサロンの主宰、幼稚園への絵本の寄贈など本に関わる活動は多岐に渡る。自身のけがの経験をnoteで発信したり、各種メディアでコラムを連載したりと執筆活動も精力的に行う。著書に、読書から得た経験や心に刺さった言葉などをまとめた『読学人間』(ダブドリ)、アナウンサー坂上俊次氏との共著『本屋の未来を、なぜか僕らが考えてみた(ザメディアジョン)』がある。<購入方法>今回紹介させて頂いた、取材対象者が実際に読んだサイン入り本(私物)は、アカデミイ書店金座街店で購入可能です。➀アカデミイ書店金座街 店舗(https://academyshoten.com/store)にて受付 7月15日〆切▼➁応募者の中から抽選▼③当選者が購入金額を決定、購入※購入金額は取材対象者に全額お渡しします。※当選者にはアカデミイ書店からご連絡させて頂きます。※当選者にはインタビューをさせて頂く場合がございます(個人情報は公開しません)。あらかじめご了承ください。LightBooksとは どんな成功者にも、頑張ってもうまくいかない“どん底”の時期がありました 。だれにも助けを求められない暗闇の中で、彼らを救ってくれた1冊とは一体何だったのでしょうか―― 。 本企画「LightBooks(ライトブックス)〜あなたの人生を照らしてくれた1冊〝譲ってください〟〜」は、著名人が人生の暗闇を明るく照らしてくれた大切な本をインタビュー形式で紹介し、実際にその本を買い取って次の読者へと販売する、アカデミイ書店による新しい試みです 。ただのおすすめ紹介ではなく、本に込められた「思い」や「ゲン担ぎ」という付加価値を次の挑戦者へと継承し、新たな光を灯すことを目的としています 。